改訂新版 世界大百科事典 「潮岬会合」の意味・わかりやすい解説
潮岬会合 (しおのみさきかいごう)
和歌山県潮岬の近隣漁村民が漁業上の規約を決め,その履行を誓うために御崎神社で行った集会。集会の創設は南北朝期ころまでさかのぼることができるが,成文規約の形で明確化したのは寛永期(1624-44)である。規約の骨子・内容は近世期を通じて大きな変化はみられず,維新後も布達,省令や旧漁業法に基づく編制を経て,潮岬漁業組合に継承された。会合には西牟婁郡の上野浦・出雲浦・串本浦を触頭に有田~周参見までの12ヵ浦,東牟婁郡の大島~下田原までの6ヵ浦のつごう18ヵ浦が参加した。寒暖2潮流が交わる熊野灘の中心地,潮岬近海がカツオの好漁場であるところから,会合は地縁的産土的御崎明神信仰(神主潮岬氏は熊野本宮社官の家筋)を紐帯に,会合浦によるカツオの独占的収獲を図ったもので,そこではおもに他浦からの侵漁防止,毎年旧暦3月3日~5月5日までのカツオ漁の操業秩序と制限,カツオの生餌エドコイワシの限定捕獲,水夫の雇用方法などが盟約された。もっとも,各浦の地先諸漁はこれによって規制されず,おのおのの浦掟にゆだねられた。
執筆者:田島 佳也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報