フランスの詩人・小説家ネルバルの短編集。1854年刊。女性の名前を題名にした7編の作品を収録。なかでは『シルビー』が、その豊かな地方色と叙情性とによって広く愛読されている。しかし、この作品の真の魅力は、女優にむなしい恋をしている主人公が、呪縛(じゅばく)から逃れるために、幼時の恋を求めて田舎(いなか)へ赴くという筋立ての裏に、独特の神秘思想に彩られた観念や幻想が秘められていることから生じている。この点は他の6編についても、ほぼ同様である。また本書には、巻末にフランス近代詩史上の奇跡と称される12編のソネットを集めた『幻想詩集』les Chimèresが併収されていることでも、重要な意義がある。
[入沢康夫]
『中村真一郎訳『火の娘』(新潮文庫)』
…帰国後は《東方紀行》(1851)や《幻視者たち》(1852)などの著作に没頭したが,49年以降発作が再発し,55年にパリの裏町で縊死体で発見されるまで,入院と退院を繰り返した。だが,短編小説集《火の娘たち》(1854,巻末に《幻想詩編》が付く)や小説《オーレリア》(1855)等の傑作の多くは,この狂気の発作が頻繁に訪れた晩年に書かれている。 ネルバルは早くから神秘思想に興味を持ち,錬金術やカバラや占星術などの神秘学のほかに,西洋や東洋の古代宗教に関する多数の書物を読みあさった。…
※「火の娘たち」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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