入沢康夫(読み)イリサワヤスオ

デジタル大辞泉 「入沢康夫」の意味・読み・例文・類語

いりさわ‐やすお〔いりさはやすを〕【入沢康夫】

[1931~2018]詩人・フランス文学者。島根の生まれ。前衛的・実験的な詩で知られ、詩集季節についての試論」でH氏賞受賞長詩注釈からなる「わが出雲・わが鎮魂」では読売文学賞を受賞した。詩論も多数執筆。宮沢賢治ネルバル研究にも業績を残した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「入沢康夫」の意味・わかりやすい解説

入沢康夫
いりさわやすお
(1931―2018)

詩人、フランス文学者。島根県松江市生まれ。東京大学仏文科卒業。東京大学大学院フランス語フランス文学科修士課程修了後、筑摩(ちくま)書房に入社、その後明治学院大学、東京工業大学を経て明治大学教授。1950年代に詩的出発を遂げ、『明日の会』『今日』に参加。『あもるふ』を創刊。大学在学中に第一詩集『倖(しあわ)せ それとも不倖せ』(1955)を刊行。おもな詩集に、長篇(ちょうへん)散文詩『ランゲルハンス氏の島』(1962)、『季節についての試論』(1965。H氏賞)、本文と膨大な注釈からなる構成で戦後詩を代表する詩集となった『わが出雲(いずも)・わが鎮魂』(1968。読売文学賞)、『死者たちの群がる風景』(1982。高見順賞)、『水辺逆旅歌』(1988。藤村記念歴程賞)、『漂ふ舟――わが地獄くだり』(1994。現代詩花椿(はなつばき)賞)、『遐(とお)い宴楽(うたげ)』(2002)ほか。選詩集に現代詩文庫『入沢康夫詩集』。1996年(平成8)に全詩集『入沢康夫<詩>集成1951―1994』上・下が刊行される。詩論集に『詩の構造についての覚え書』(1968)、『詩的関係についての覚え書』(1979)、『詩にかかわる』(2002)などがある。独自の方法論を貫き、現代詩に新領域を切り開いた詩人として知られた。フランス文学者としてはジェラール・ド・ネルバルの研究で名高く、『ネルヴァル覚書』(1984)などがある。また宮沢賢治の研究者としても知られ、1971年(昭和46)天沢退二郎らとともに賢治の遺稿調査に着手、『校本宮沢賢治全集』『新校本宮沢賢治全集』の編纂(へんさん)にあたった。賢治論に『宮沢賢治――プリオシン海岸からの報告』(1991)がある。

[吉田文憲 2018年12月13日]

『『季節についての試論』(1965・錬金社)』『『わが出雲・わが鎮魂』(1968・思潮社)』『『現代詩文庫31 入沢康夫詩集』(1970・思潮社)』『『倖せ それとも不倖せ』(1973・書肆山田)』『『詩的関係についての覚え書』(1979・思潮社)』『『死者たちの群がる風景』(1983・河出書房新社)』『『ネルヴァル覚書』(1984・花神社)』『『水辺逆旅歌』(1988・書肆山田)』『『宮沢賢治――プリオシン海岸からの報告』(1991・筑摩書房)』『『漂ふ舟――わが地獄くだり』(1994・思潮社)』『『入沢康夫<詩>集成1951―1994』上・下(1996・青土社)』『『遐い宴楽』(2002・書肆山田)』『『詩にかかわる』(2002・思潮社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「入沢康夫」の解説

入沢康夫 いりさわ-やすお

1931- 昭和後期-平成時代の詩人,フランス文学者。
昭和6年11月3日生まれ。知的,技巧的な作品がおおく,昭和41年「季節についての試論」でH氏賞,44年「わが出雲・わが鎮魂」で読売文学賞,57年「死者たちの群がる風景」で高見順賞,63年「水辺逆旅歌」で藤村記念歴程賞をうける。「ネルヴァル全集」の翻訳や「校本宮沢賢治全集」の編集でも知られる。55年明大教授。20年芸術院会員。島根県出身。東大卒。

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