無くて七癖(読み)ナクテナナクセ

デジタル大辞泉 「無くて七癖」の意味・読み・例文・類語

くて七癖ななくせ

どんな人でも多少は癖があるものだということ。「無くて七癖有って四十八癖しじゅうはっくせ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「無くて七癖」の解説

無くて七癖

あまり癖がないと思われる人でも、よく見ると七つほど、さまざまな癖がある。人にはそれぞれ癖があって当たり前だから、あまり気にすることはないということにもなる。

[使用例] このみのるのみいどんは、どうしてか生れつきたいへんな煙草好きで、自分でもこれには全く困っていました。彼はクリスチャンの家庭に生れ、教会はもちろん、中村屋としても成年未満のうちは法度の煙草を、こればかりはどうもならずあの善良なみいどんが、人目ぬすんでこっそりと喫っていたのは気の毒でした。人にはなくて七癖、みいどんにはもう一つ朝寝坊の癖がありました。[相馬愛蔵相馬黒光*一商人として|1938]

[使用例] 俗に無くて七癖と申しますが、どんな人にでも必ずこの癖というものはある。しかし自分の癖というものはなかなかわかりにくいのが普通です[喜多六平太*六平太芸談|1942]

[解説] 他人の癖が気になることがあります。しかし、気にしている当人にも、他人からみると多少おかしな癖があり、本人は気づいていないことも多いといえるでしょう。ことわざは、そうした微妙な心理を踏まえながら、深入りせず、簡潔にさらりと表現しています。そういわれると、他人の癖には少し寛容になり、自分の癖をかえりみる余裕も出てきて、心のバランスが回復しやすくなります。
 「無くて」「七癖」と「ナ」音の頭韻が利いて、印象的な表現となっています。この「七」は、数え上げて七つというより、(あまり好ましくないものも含めて)さまざまなという意味合いの濃い象徴的な数です。「あって四十八癖」と続けることもありますが、この「四十八」はさらに多種多様なことを象徴する数といえるでしょう。

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