日本大百科全書(ニッポニカ) 「焼却器」の意味・わかりやすい解説
焼却器
しょうきゃくき
家庭や企業などから出た紙くず、塵埃(じんあい)、厨介(ちゅうかい)などを焼却処理する器具の通称。小型の焼却炉をさすことが多い。社会生活や経済活動に伴い、毎日大量のごみが排出されるが、清潔な社会環境を保持するためには、ごみ処理は欠かすことのできない問題であり、現在その処理はほとんどが各都市の公共機関によって行われている。1990年代後半に入り、公共機関のごみ処理施設から有害物質のダイオキシンが排出されたことで、各都市では処理法を見直し、整備・規制する動きが始まった。1999年にはダイオキシン類対策特別措置法が成立したが、焼却処理能力が1時間50キログラム以下の焼却炉は適用外である。なお、1997年文部省(現文部科学省)はダイオキシン対策として、全国の小中高校のごみ焼却炉を原則的に全廃することに決定した。
廃棄物の多い企業体では、産業機密を保持するために高熱焼却炉をビル内に設置したり、書類を裁断するための設備や、企業用の焼却炉を備えているところが多い。また公共機関によるごみ処理が行われない地域とか、ごみの量の多い家庭などでは、家庭用焼却器で処理する方法もとられるが、有害物質を排出させないため、できるだけ焼却しないようにすることが望ましい。
普通、焼却器はほうろう製や耐熱性の本体、ステンレス製の煙突とからできており、火皿か、縦あるいは横のロストル(火格子)がついている。さらに本体には一重構造のものと二重構造のものがある。仕組みは、上部からごみを入れて、灰出し口から点火し、吸気孔からの空気で燃焼させるようになっている。
[阿部絢子]