改訂新版 世界大百科事典 「煮凝」の意味・わかりやすい解説
煮凝 (にこごり)
煮魚などの煮汁が冷えて凝固したもの,また人為的に凝固させた料理。単に〈こごり〉ともいった。魚などに含まれるゼラチン質の作用によるもので,煮汁中のゼラチン量が5%以下の場合15℃以下でないと凝固しないので,現在では一般に煮汁にゼラチンや寒天を加えてつくる。タイ,ヒラメ,カレイ,オコゼ,アンコウ,フグ,コイなどのほか鶏肉も材料として用いられ,市販品にはサメなどが使用される。《日本霊異記》に〈鯉を煮て寒凝(こごら)す〉とあるように,コイ,フナなどを煮て寒気で凍らせることは古くから行われ,貢納品ともなった。《四条流庖丁書》は夏のこごりこそ誇るべきものという。《料理物語》は夏にはところてんを加えるとし,ところてん,葛粉(くずこ)などによる凝固力の強化は室町時代すでに行われたようである。
執筆者:松本 仲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報