改訂新版 世界大百科事典 「熱帯黒色土壌」の意味・わかりやすい解説
熱帯黒色土壌 (ねったいこくしょくどじょう)
熱帯を中心に亜熱帯から暖温帯にまで分布する粘土質で暗色の土壌に対する総称で,いくつかの土壌型が含まれる。インドのレグールregurや黒綿土(こくめんど)black cotton soil,インドネシアのマーガライト土margallitic soil,中央アフリカの熱帯チェルノーゼム,スーダンのバドーブbadobsoil,南アフリカのフライvlei soil,北アフリカのティルtir,ポルトガルのバロスbarros,バルカンのスモニッツァsmonitzaまたはスモルニッツァsmolnitza,オーストラリアの黒色土,アメリカのグルムソルgrumsolなど多くの地方名があり,アメリカ合衆国の土壌分類体系《Soil Taxonomy》(1975)ではバーティソル目に含まれている。これらに共通する特徴は,モンモリロナイト質粘土に富み,乾季に乾燥するといちじるしく収縮して大きな亀裂を生じ,雨季に湿ると膨潤して亀裂が閉じることが毎年反復されるので,土塊が摩擦し合って鏡肌とよばれる特有な平滑な面ができ,地表にはギルガイgilgaiとよばれる凹凸のある微地形を生ずることである。塩基類に富んでいるが,湿潤時にはべたついて農機具類に付着するので耕耘しにくく,乾季にはきわめて堅くなるなどきわめて取扱いのやっかいな物理性をもっており,熱帯地域における問題土壌の一つである。
執筆者:永塚 鎮男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報