日本大百科全書(ニッポニカ) 「物詣で・遊山」の意味・わかりやすい解説
物詣で・遊山
ものもうでゆさん
物詣でとは、神仏へ祈願するために神社仏閣等へ参拝することで、遊山とは、遊楽のために外出すること。平安時代には貴族たちを中心として京都・奈良の諸寺社へ参詣(さんけい)することが多かったが、末期から鎌倉時代にかけては熊野・伊勢(いせ)・高野(こうや)詣でなどの遠距離のものが盛んになった。鳥羽(とば)上皇は16度、後白河(ごしらかわ)上皇は34度も熊野詣でを行った。熊野詣では多くの人々が列をなして続くことから「蟻(あり)の熊野詣で」といわれるほど、盛況であった。近世に入って交通の発達とともに寺社への参詣はたいへん盛んになった。旅行に必要な名所旧跡案内書が多く出版され、前代ではみられない庶民の遠出がみられた。庶民は伊勢講、金毘羅(こんぴら)講等の講を組織し参詣するようになった。講には、講中の全員の参加と、祈願を代理する者をたてる代参との二種類がみられた。現在、観光旅行は年々盛況となっているが、寺社詣での伝統は根強く残り、見学地に神社仏閣の含まれていることが多い。
[芳井敬郎]