犬鳴谷村(読み)いぬなきだにむら

日本歴史地名大系 「犬鳴谷村」の解説

犬鳴谷村
いぬなきだにむら

[現在地名]若宮町犬鳴

脇田わきた村・乙野おとの村の西、犬鳴川最上流域の山間部に位置し、南は表粕屋おもてかすや久原くばら(現久山町)、西は同郡猪野いの(現同上)、北は同郡薦野こもの(現古賀市)。四面を山々に囲繞される当地には渓谷二六ヵ所があったといい、単に犬鳴谷あるいは犬鳴山ともいった(「御仕立炭山定」県立図書館蔵黒田家文書、「地理全誌」)。また古くは一帯火の平ひのたいらといったともいう(続風土記)。かつては脇田村の内であったが、安永五年(一七七六)に高分けをして犬鳴谷を称したという(地理全誌)。犬鳴山の開作は嘉摩かま立岩たていわ(現飯塚市)から善兵衛という者が来たのが最初であったという(享保一四年「犬鳴山故実」浄久寺文書)。「続風土記」によれば、江戸時代初期には豊富な山林資源を活用し木炭・薪・紙や船の櫓柁などが生産されていたが、元禄(一六八八―一七〇四)頃には山林資源が枯渇し、木炭なども生産されなくなったという。貞享年間(一六八四―八八)には勘場の設置、禁制発令などを実施し、元禄年間には裏粕屋うらかすやみなと(現新宮町)から篠崎弥助を庄屋に招くなど森林復興策が取られ、享保九年(一七二四)には再び紙漉炭焼が行われるまで森林は回復したという(犬鳴山故実・「続風土記附録」)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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