紙漉(読み)かみすき

精選版 日本国語大辞典 「紙漉」の意味・読み・例文・類語

かみ‐すき【紙漉】

〘名〙 和紙を漉くこと。また、それを職とする人。《季・冬》 〔庭訓往来(1394‐1428頃)〕
※俳諧・類題発句集(1774)冬「紙漉の漉残してや初氷巴静〉」
[補注]特に、女性の紙漉き職人は「かみすきめ(紙漉女)」と呼ばれることがある。

かみ‐こし【紙漉】

〘名〙 不純物などを取り除くために、紙でこすこと。また、紙でこした精製油。
浄瑠璃女殺油地獄(1721)上「本天満町まちの幅さへほそぼその。柳腰柳髪とろりとせいもたね油、梅花紙こし、ゑの油」

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百科事典マイペディア 「紙漉」の意味・わかりやすい解説

紙漉【かみすき】

紙はコウゾカジノキアサ,ガンピ,ミツマタなどの食物繊維原料として製された。古くは中国から伝来した基本的な製紙法の溜漉(ためすき)が行われたが,平安初期までに植物の内皮や根から抽出した粘着質を混ぜる日本独自の流漉(ながしずき)を考案,独特の和紙を生んだ。律令時代,紙漉は官営で,中央と国府所在地に専門の紙漉工がいた。需要の増大により奈良時代以降は民間生産の地方産紙が生まれ,室町時代には越前(えちぜん)奉書などの特産地も生まれた。民間の紙漉の多くは他に産業のない農山村民が担ったが,江戸時代には小物なりとして紙漉運上・紙船役などが課せられた。なお商品化した紙は紙商人によって売買され,鎌倉時代には紙座があり,江戸時代には紙商仲間が成立。また紙専売制をとった藩も多かった。
→関連項目和紙

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「紙漉」の解説

紙漉
かみすき

紙を漉くこと。溜漉(ためずき)と流し漉がある。溜漉は後漢の蔡倫(さいりん)が創始したという方法。十分に叩解(こうかい)した紙料を水の入った紙漉船に入れ,これを簀(す)と桁(けた)ですくう。水が漏出したのち湿紙と簀を離し,湿紙の上に紗をかぶせる。何枚も湿紙と紗を重ね合わせ重石で水分を切り,干板で天日に干す。叩解が不十分だと繊維が凝結して漉むらができやすい。流し漉は9世紀初めに考案された技術で,助漉(じょろく)剤である黄蜀葵(とろろあおい)などのねりを紙漉船のなかで紙料に混ぜる方法。助漉剤は楮(こうぞ)などのように叩解しても繊維が長く不均等な紙料を平均化させ,漉きあげる際も簀の上になめらかで均質に広げることを可能にした。この方法は叩解に時間をかける必要がないため能率的で,楮紙(ちょし)の大量生産につながった。

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