猿倉人形(読み)さるくらにんぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「猿倉人形」の意味・わかりやすい解説

猿倉人形
さるくらにんぎょう

秋田県に伝承する人形芝居。両手に1体ずつの人形を持って1人で遣い、台詞(せりふ)は人形遣いがいう。この指人形の首(かしら)(人形の頭顔部)は、首(くび)下の短い棒を人形遣いの人差し指中指の間に挟む挟み式。これは首の自由な動きに効果的で、変化物(へんげもの)では首のすげ替えを自由に演出できるなど利点が多い。人形の手は下膊(かはく)が管(くだ)式で、遣い手の親指小指に差し込むなどの特色をもつ。明治中期に鳥海山麓(ちょうかいさんろく)の村百宅(ももやけ)(現秋田県由利本荘(ゆりほんじょう)市鳥海町)出身の池田与八(芸名吉田若丸)の創案になるが、2代目の真坂藤吉(吉田勝若)の出生地猿倉(現同鳥海町)の名が人形名称として普及し、昭和初期まで全国的に巡業されていた。第二次世界大戦後も昭和50年代まで、本荘(ほんじょう)市(現由利本荘市)に木内勇吉、雄勝(おがち)郡羽後(うご)町に鈴木栄太郎、北秋田郡合川町(現北秋田市)に吉田千代勝らが、また出羽(でわ)人形と称して山形県鶴岡市に津盛(つもり)柳太郎が活躍。代表的演目に、秋田人形甚句(じんく)による『鑑鉄和尚(おしょう)』、劇物鬼神(きじん)のお松』があり、娯楽性が濃い。秋田県無形文化財で、1996年(平成8)には国の選択無形民俗文化財となった。

[西角井正大]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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