日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉造部」の意味・わかりやすい解説
玉造部
たまつくりべ
「たますりべ」とも訓(よ)む。古代、勾玉(まがたま)、管玉(くだたま)、平玉(ひらだま)などの玉類の製作に従事した職業部である。『日本書紀』神代紀の一書には玉造部の遠祖を豊玉(とよたま)とするほか、玉作の遠祖を伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の子天明玉(あまのあかるたま)などと記している。『古語拾遺(しゅうい)』によると、出雲(いずも)の玉作の祖を櫛明玉命(くしあかるたまのみこと)としているが、これは忌部(いんべ)の祖太玉命(ふとたまのみこと)に率いられた五神の1人という。玉作の地名は、河内(かわち)、大和(やまと)、武蔵(むさし)、下総(しもうさ)、常陸(ひたち)、摂津(せっつ)、近江(おうみ)、周防(すおう)、讃岐(さぬき)、出雲などに及ぶように全国的に玉造部は分布し、中央の玉作造(たまつくりのみやつこ)(玉作連(たまつくりのむらじ))に統率されていたらしい。古代の玉は呪能(じゅのう)をもつと考えられ、『出雲神賀詞(かむよごと)』に「白玉の大御白髪(おおみしらが)まし、赤玉の御赤(みあか)らびまし、青玉の水の江の玉の行相(ゆきあい)」と唱えられるように長寿や健康を祈るものであったから、玉造部は宗教的儀礼に深くかかわっていたようである。
[井上辰雄]