日本大百科全書(ニッポニカ) 「豊玉」の意味・わかりやすい解説
豊玉
とよたま
長崎県下県(しもあがた)郡にあった旧町名(豊玉町(ちょう))。現在は対馬市(つしまし)豊玉町(まち)地区。旧豊玉町は1975年(昭和50)町制施行。2004年(平成16)厳原(いづはら)、美津島(みつしま)、上県、峰(みね)、上対馬(かみつしま)の5町と合併、市制施行して対馬市となる。旧豊玉町は、対馬の中央部に位置する。平安時代の玉調(たまつき)郷の北部を占める。主邑(しゅゆう)の仁位(にい)は、浅茅湾(あそうわん)の支湾である仁位浅茅湾の湾奥に位し、樽ヶ浜(たるがはま)(対馬市美津島町地区)との間に定期船が就航、また区域内を対馬縦貫道路(国道382号)が走る。区域の約90%は林野で占められるが、粗悪林が多かったため、近年人工造林が進み、シイタケ栽培が盛んである。漁業は、水ノ浦のタイ・ブリ、網島のキビナゴ・トビウオのほかイカの一本釣り漁業が盛んで、するめの特産があり、仁位浅茅湾・濃部(のぶ)浅茅湾では真珠養殖が行われている。湾岸には豊玉姫を祀(まつ)る和多都美神社(わたつみじんじゃ)があり、正面の鳥居は、満潮時には2メートル近く海中に浸っている。西の烏帽子(えぼし)岳(176メートル)から浅茅湾、東の権現(ごんげん)山(139メートル)から大漁(おろしか)湾を望む景観はすばらしい。
[石井泰義]
『『豊玉町誌』(1992・豊玉町)』