生態学的心理学(読み)せいたいがくてきしんりがく(その他表記)ecological psychology

日本大百科全書(ニッポニカ) 「生態学的心理学」の意味・わかりやすい解説

生態学的心理学
せいたいがくてきしんりがく
ecological psychology

アメリカ心理学バーカーRoger Garlock Barker(1903―1990)らが、その師であるK・レビンの提唱した心理学的生態学psychological ecologyをさらに発展させた心理学の一分野。レビンによれば、心理学は生活体が心理的・行動的環境、いいかえれば生活空間のなかでいかに行動するかを研究する学問であるが、その生活空間は、実際には物理的・地理的・社会的事実によって構成された環境との関係で成立している。それゆえ、たとえその環境が生活体の行動を直接的に説明するものではないにしても、心理的・行動的環境と物理的・地理的環境との関係を考察することが必要だとして、この研究領域を心理学的生態学と名づけた。

 バーカーらはこの研究をさらに発展させ、とくに観察し記述すべき行動として、たとえば行動の型あるいは種類(宗教、教育、政治経済娯楽など)、地域的自律性(その地域の行動の自律性)、決定権の及ぶ範囲、経済的変動に伴う可変性などを指標として取り上げ、地域社会の生活の質を研究した。その方法が、動植物の生態学者が単位面積当りの密度や単位時間当りの頻度をありのままに観察するやり方と同じであったため、彼らはこの研究領域を生態学的心理学と名づけたのである。なお、バーカーの著書に『Ecological Psychology : Concepts and Methods for Studying the Environment of Human Behavior』(1968)がある。

[宇津木保]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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