改訂新版 世界大百科事典 「生活保護基準」の意味・わかりやすい解説
生活保護基準 (せいかつほごきじゅん)
生活保護の最低生活保障水準を具体的に示すものであり,厚生大臣によって決定される。各種福祉政策等の生活保障水準を定める基礎としても重要な意味をもつ。概して月単位で算定され,物価・生計費などの変動に即応して,近年は年ごとに1回改定されている。地域差による3段階の級地区分がある(ほぼ1級地は大都市,2級地は中都市,3級地は小都市その他を目安とし,その格差比率は1978年以降それぞれ100.0,91.0,82.0)。
生活保護の7種の扶助にそれぞれ基準が設けられているが,居宅,日常の生活費に当たるのは,生活,教育,住宅の3扶助であるといってよい。生活扶助では,基準生活費は一類費(性,年齢別),二類費(世帯人員別,11~3月には冬期加算が付加される)および年末の期末一時扶助によって構成される。これに加えて妊産婦加算・障害者加算など,個々の必要に応ずる加算がある。朝日訴訟で具体的に象徴的に問題となった基準は,入院患者日用品費で当時月600円であった。教育扶助基準では,基準のほかに学校給食費,通学費,クラブ活動用具費,学級費などへの一定の上積みを認めている。住宅扶助基準では,家賃・間代などの多様性に対して,一応基準額を定めているものの,年ごとに改定される各地の第2種公営住宅家賃の最高額を標準とし,その1.3倍などという特別基準を設定することとしている。以上の3扶助基準を合算して最低生活費とし,これと収入額とを対比して保護要否判定がなされる(差額が支給される)が,その際,各種の収入控除を考慮する必要がある。収入控除には食物,被服等のための金額を見積もる業種別基礎控除や,社会保険料,労働組合費,通勤費等に対する実費控除等がある。かくて月ごとの最低生活保障水準は,3種基準と収入控除との合算額で得られる。一般世帯と保護世帯との家計調査による生活費の格差(東京都区部,標準4人世帯)は漸次縮小してきているが,一般世帯を100.0として1960年38.0,65年50.2,80年59.1,93年68.2となっている。なお保護基準の算定方式は,マーケット・バスケット方式(1948-60),エンゲル(係数)方式(1961-64),格差縮小方式(1965-84)と変遷し,現在は水準均衡方式になっている。
→生活保護
執筆者:小沼 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報