日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンゲル」の意味・わかりやすい解説
エンゲル
えんげる
Christian Lorenz Ernst Engel
(1821―1896)
ドイツの統計学者。「エンゲルの法則」の発見者として有名。ドレスデンに生まれる。フライブルクの鉱業専門学校で採鉱冶金(やきん)学を学び、卒業後約2年間にわたってヨーロッパ諸国に遊学した。その間、パリで、鉱山技師であり家計調査の著名な研究者でもあったル・プレーと出会い、さらにベルギーのブリュッセルで、天文学者であるとともに優れた統計学者でもあったケトレーに接する機会を得たが、この両者との交渉はその後のエンゲルの生涯を決定することとなった。帰国後ザクセン王国の工業労働事情調査委員として活躍した功績によって同王国統計局長となり、さらに1860年からはプロイセン王国統計局長に就任、以降22年間この職にあって、ドイツの統計行政のみならずヨーロッパ諸国の統計制度の発展のために指導的役割を果たした。またこの間、多くの学問的業績も残しているが、なかでも『ザクセン王国における生産と消費事情』(1857)で基礎を提示し、『ベルギー労働者家族の生活費』(1895)で、家計支出に占める食料費の割合として明示した「エンゲルの法則」は、今日でも生活水準を考えるうえで重要な役割を果たしている。
[木村太郎]