田中広虫女(読み)たなかのひろむしめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中広虫女」の意味・わかりやすい解説

田中広虫女
たなかのひろむしめ

日本霊異記(にほんりょういき)』(下巻―26)にみえる説話上の女性。讃岐(さぬき)国美貴(みき)(三木)郡の大領である外従(げじゅ)六位上小屋県主(あがたぬし)宮手の妻。説話の内容は、馬牛、奴婢(ぬひ)、稲銭、田畠(たはた)などを多く所有する広虫女が、大小の枡(ます)やはかりの差を利用した利の収得など、非理な貸付と取り立てによって、報いが生じ死去したことを記して、「非分」の徴収を戒めたもの。説話とはいえ、その内容は、奈良時代の女性の財産所有のあり方や当時の蓄財活動の一面を活写している点で注目される。

[荒木敏夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田中広虫女」の解説

田中広虫女 たなかの-ひろむしめ

「日本霊異記」にみえる女性。
讃岐(さぬき)(香川県)美貴(みき)(三木)郡の郡司小屋県主宮手(おやのあがたぬしの-みやて)の妻。強欲な財産家で,高利の貸し付けや残酷な取り立ての報いをうけて宝亀(ほうき)7年(776)病死したが,上半身が牛の姿で生きかえる。おどろいた家人が寺に財物を寄進し,貸し付けも棒引きにするなどして罪業をつぐなったため,まもなく死去したという。

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