改訂新版 世界大百科事典 「田打車」の意味・わかりやすい解説
田打車 (たうちぐるま)
水田の除草用具。短いつめを多数取り付けた自由転動する回転軸を2~3本,15cm×20~30cmのわくに組みこんだもの。イネの条間に置き,前後に動かしながら進んでゆくと,つめが転動して水田の土をかきまわし草をとる。立った姿勢で作業できるよう柄が付けられている。田を打つとは本来,田の耕起を意味するのであるが,ここではつめで田をひっかくくらいの意味である。なお,これは明治中期に鳥取の中井太一郎により発明されその名をとって〈太一車〉と呼ばれ,これがなまって田打車になったとしている書物もあるが,同様なくふうは各地で明治初年からなされている。したがって中井により最終的な完成をみたとする方が正しい。これの出現により,〈がんづめ(雁爪)〉や手で草を取るしゃがんでする作業の苦痛から解放されたし,また作業能率も1日約4反とがんづめの4倍となった。正条植えの普及にともなって出現した除草具である。これの可動部分のない構造の簡単なものに〈八反取り〉がある。田打車はその後いくつかの改良が加えられ,戦後除草剤の使用が一般化するまで使われていた。
執筆者:堀尾 尚志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報