作物の生育中に,その間の土の表層を浅く耕耘する作業。中耕に対しては,(1)雑草を引き抜いて殺すこと,(2)固結しやすい土では表層を軟らかくして通気性を高めること,(3)傾斜地では土の透水性を高めて降雨時の土壌浸食を防ぐこと,など各種の効果が唱えられている。しかし,主要な効果は耕地の立地条件によって異なっており,日本のように夏季に温暖多湿な条件下では,雑草の防除が最大の目的となる。一般に中耕は集約的農業で実施されるもので,中耕の効果の著しくあらわれる作物は中耕作物,耨耕(じよつこう)作物などと呼ばれる。
日本の水田では,江戸時代から腰を曲げて雁爪(がんづめ)(刃が3~5本に分かれた小型のくわ)を田面に打ち込む中耕が行われ,明治末以降は水田の中を固定爪や回転爪を押して表土をかくはんする中耕除草機が普及してきたが,中耕は夏季の最大の重労働となっていた。水田における中耕の効果については,雑草防除のほかに,地温の上昇,土中への酸素の導入,土中の有害ガスの除去,土中の有機態窒素の無機化,一時的断根による新根発生の促進などが,水稲の生育に良い結果をもたらすとの説が唱えられていた。しかし,第2次大戦後除草剤の出現とともに,これらの効果を雑草防除効果と分離して検討した結果,雑草防除以外の効果はきわめて小さいことが明らかになった。
一方,乾燥地帯では中耕の主目的は水の有効利用にある。すなわち,降雨後直ちに土の表面を浅くかくはんし,土の下層から表面への水の毛細管移動を断ち切って,表面からの蒸発を抑制し,保水効果を高めるために中耕を行っている。日本の畑作地帯での中耕は,くわやホーを用いた人力作業が多かったが,最近では機械化の進展とともに,耕耘機やトラクターにカルチベーター,ロータリーホーなどを取り付けた作業も行われるようになった。作業の際には,作物の根を切らずに雑草を確実に殺すために,実施する時期,爪の到達する深さ,機械の走行速度などの検討が重要である。また,作物のあぜの中に生えた雑草は,通常のあぜとあぜの間の中耕では防除できないので,あぜとあぜの間の土を作物の茎の基部へ盛り上げ,雑草を埋めて殺す培土(土寄せ)によって行われる。
執筆者:春原 亘
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