改訂新版 世界大百科事典 「異常トラヒック」の意味・わかりやすい解説
異常トラヒック (いじょうトラヒック)
extraordinary traffic congestion
設計時に予測された平常時の通信トラヒックに比べて,はるかに多くのトラヒックが電気通信網に加えられる場合がある。これを異常トラヒックという。異常トラヒックは社会的事件の発生,ゴールデンウィーク前の切符の予約,自然災害時の見舞い,通信網の障害に付随したトラヒックの流れの急変などいろいろな原因で発生し,局部的には平常時トラヒックの数倍から数十倍に及ぶこともある。電話が普及し,住宅電話のように電話をかける率の低い加入者数が増大すればするほど,これらは潜在的な異常トラヒックの発生源として問題を大きくしつつある。
異常トラヒックが発生すると通信回線がふくそうし,これにより話中(わちゆう)率が高くなると電話のかけ直し(再呼)という形でトラヒック入力に第二次的なフィードバック効果をもたらす。これにより無効トラヒックが自己再生的に急増し,交換機などの通信網制御装置が過負荷状態に追い込まれる。過負荷は隣接交換局にも波及し,ついには通信網機能を麻痺させる。
異常トラヒック防止対策としてはいくつかの方法が考えられている。第1は適切な案内などによるかけ直しの防止策である。第2は規制措置である。規制には迂回中継の制限などによる回線規制や,通信の重要性に応じて受付け停止を行う入力規制などがある。第3はふくそう状況に適応して通信網の形態や制御方法を切り替える適応制御による手段である。これらを効果的に実施するためには,通信網全体を見渡して適切な措置を可能とする,広域集中監視体制の確立が,きわめて重要である。
執筆者:秋山 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報