翻訳|traffic
電気通信網内を流れる個々の通信あるいは通信要求を呼(〈こ〉あるいは〈よび〉)といい,呼の流れの総体を通信トラヒックあるいは単にトラヒックという。通信網においては呼は多数の通信端末から確率的に生起する。したがって,トラヒックは時間的に変動する。この確率的な変動要因を考慮し,統計確率的手法に基づいて必要な通信設備数やサービス品質などの計算を行う設計理論がトラヒック理論である。
呼の性質は保留時間(通信時間)や情報内容などにより定められる。情報理論では通信の量を表す尺度として情報量が定義されているが,これは呼の中身にまで立ち入っていわばその価値を評価したものである。しかし,多数の呼を扱う通信網の立場からみると,個々の情報内容は直接的には問題にはならず,それよりは各呼が通信設備をどれだけ使ったかが重要であり,占有時間だけを知れば十分である場合が多い。このような考え方からトラヒック量は(トラヒック量)=(通信回線の延べ保留時間)と定義されている。これを単位時間当りに換算した値を呼量あるいはトラヒック密度といい,アーランという単位で表示する。例えばある回線で1時間当りに呼全体で延べa時間分の通信が運ばれたときに,aアーランの呼量が運ばれたという。
通信網(あるいは通信機器)におけるトラヒックの混雑状態を輻輳(ふくそう)という。通信網設計上のサービス条件を規定するパラメーターは輻輳の度合すなわち輻輳率であり,通信トラヒック解析の主要目的はその算出であるといってもよいであろう。輻輳率にはシステムの対象によっていろいろなパラメーターが定義されている。例えば電話交換網のような即時式交換系では呼損率がある。これは回線全話中のために生起した呼を接続できない確率である。またデータ交換網のような待時式交換系の輻輳率には呼損率のほかに待合せ率,待ち時間,待ち行列長などの確率分布も対象になってくる。
通信網のトラヒック処理特性を定める主要因は,呼の性質,交換機の回線選択制御法,通信網の構成形態などである。呼の性質としては呼の生起のしかたと保留時間の確率分布が問題になる。呼源の数が多い場合には全体としての呼の生起のしかたはポアソン分布に従うランダム生起とみなされる場合が多いが,特殊なシステムでは周期的生起,集団生起など特別な確率分布を用いなければならないこともある。電話トラヒックのように保留時間の長さの分布がランダムとみなされるような場合には指数分布がよく適合する。しかし,データ通信など特殊な呼に対しては一定分布やアーラン分布など,特別な確率分布などを仮定しなければならないことも多い。
交換制御法には大別すると即時式交換と待時式交換がある。また,呼に優先順位をつけて選択制御を行ったり,種類の異なる呼を一括して扱う多元トラヒック処理など,特別な制御を行う方式もある。通信網の構成形態でトラヒック特性に直接的に影響を与えるパラメーターは回線数であるが,中継交換段数や迂回中継の有無によってもトラヒック処理特性は変わってくる。
トラヒック理論は上記のようないろいろな設計パラメーターを統計的手法により定義づけて現実のシステムをモデル化し,これを確率的手法によって解析して輻輳率などのトラヒック処理特性を算出し,その算出結果に基づいて具体的にシステム設計を行うための基礎理論ということができるであろう。
以上は通信網設計を念頭において説明したが,トラヒック理論は通信システムのみならず,不特定多数の人を相手にする窓口における事務処理,コンピューター制御システムによる情報処理,交通運輸システムの交通トラヒック処理など幅広い応用範囲をもっている。なお,この種の設計理論に待ち行列理論と呼ばれるものがあるが,これは待ち行列を形成するシステムを主要対象にしたものであり,名まえが異なり,対象に多少の違いはあっても,通信を対象としているトラヒック理論と理論的手法はまったく同じものと考えてよい。
執筆者:秋山 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
※「トラヒック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...
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