内科学 第10版 「病院感染対策」の解説
病院感染対策(感染症総論)
(1)感染源・感染経路対策
リネン,医療機器・材料の滅菌消毒,無菌操作の徹底,病院環境の正常化などがあげられる.米国CDCのガイドラインでは,体液,血液,分泌物,排泄物,傷のある皮膚・粘膜などは,手袋の装着など病原体汚染があることを前提として取り扱うことを標準的予防策(standard precautions)として推奨している.
呼吸器感染が懸念される患者については,可能な限り個室管理,陰圧個室管理,集団隔離などの対策をとる.注射針の使用頻度が高い病院では,医療従事者の針刺し事故により,HBV,HCV,HIVなど血液媒介感染の可能性がある.針刺し事故は,使用時にはずしておいたキャップを再装着(リキャップ)する際に好発する.医療従事者へのB型肝炎ワクチン接種の徹底が望まれる.万一汚染の可能性のある針刺し事故が発生した場合には,秘密保持,労災手続きなどの受傷者保護と,必要に応じて抗HIV薬の服用,HBV感染対策,検査による経過のチェックなどを行う.
(2)院内感染対策委員会と院内感染対策チーム
病院長直属の組織として,医師(infection control doctor),看護師(infection control nurse),検査技師,薬剤師,事務職員などで構成する.院内感染のサーベイランスを行い,病院における薬剤耐性菌分離頻度や院内感染の実情を把握し,対策を立て実行する.細菌検査室との連携により,院内感染の発生をできる限り早く発見することに努める.病院職員への教育,啓発を行う.必要に応じて院内環境の微生物学的検討を行う.[岩本愛𠮷]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報