刑罰法規において法定刑だけが明定されているが、犯罪とされる要件の全部または一部が、当該刑罰法規以外、たとえば他の法律・命令に委任されている場合をいう。白地刑罰法規ともよばれ、この白地部分を補充する規範を補充規範という。罪刑法定主義の原則からすれば、何を犯罪とし、これをいかに処罰するかが、あらかじめ法令で定められることを要するが、特別刑法の領域でしばしばみられるように、事柄の性格が流動的であるために、犯罪の成立要件をすみずみまであらかじめ規定することが困難な場合があるが、このような場合に、例外的に白地刑法が認められる。刑法典にも、この例として、中立命令違反罪(94条)などがある。
[名和鐵郎]