改訂新版 世界大百科事典 「百川治兵衛」の意味・わかりやすい解説
百川治兵衛 (ももかわじへえ)
生没年:1580-1638(天正8-寛永15)
江戸初期の数学者。佐渡で活躍する。出身地不明。富山から佐渡へ渡ってきた。キリシタンの疑いをかけられ,拘禁されたこともあるが,弟子たちの願いにより放免された。現存最古の稿本数学書の《諸勘分物》(1622)の著者である。これは巻物で,第1巻は失われ,第2巻だけが伝わった。その中では円積率は0.8,錐率は1/3と記されている。内容は,その当時佐渡で必要であったと思える算法が説明されている。土木,検地,材木の体積,壺,ひょうたんなどの複雑な立体の体積などが説明されている。数学用語はきわめて特殊で,《割算書》とも異なる。この巻物の裏に,江戸中期以降に書き加えられたと思われる算法がある。
執筆者:下平 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報