日本大百科全書(ニッポニカ) 「皮相電力」の意味・わかりやすい解説
皮相電力
ひそうでんりょく
apparent power
交流回路における見かけの電力。交流電圧の実効値と交流電流の実効値の積。交流回路に電流が流れると、電気のエネルギーは、抵抗成分(おもに抵抗器)では熱となって消費される。これに対して、リアクター(リアクタンスを生じるもので、リアクトルともいう。コイルやコンデンサー)のなかでは、それぞれ電気エネルギーおよび磁気エネルギーの形で一時蓄えられてから、電源に送り返される現象を繰り返す。したがって、交流回路の場合には、端子に加わる電圧と回路に流れ込む電流の積で表される量は、回路のなかで消費される正味の電力ではなく、見かけの電力を示すにすぎない。これを皮相電力とよんでいる。皮相電力と電力を区別するために、電力を有効電力とよぶこともある。これに対し、リアクター中で蓄積、放出を繰り返し電源と負荷の間を行ったり来たりして消費されない電力を無効電力とよんでいる。交流発電機、変圧器などの使用限度は、機器の内部の巻線を流れる電流の強さで決まるため、これらの機器の定格は皮相電力で表す。1ボルトの電圧が加わっているとき、1アンペアの電流が流れているときの皮相電力を1ボルトアンペア(VA)と決めてある。記号はS。
[布施 正・吉澤昌純]