内科学 第10版 「皮膚白血球破砕性血管炎」の解説
皮膚白血球破砕性血管炎(血管炎症候群)
概念
皮膚に限局した小型血管炎で,全身性血管炎や糸球体腎炎を伴わないものである.単一の疾患単位でなく,「白血球破砕性血管炎」という特徴的な病理所見を呈する一連の病態の総称である.原因として種々の外来抗原(薬剤,化学物質,細菌感染)によるものが多いが,原発性血管炎では単一臓器の血管炎(single organ vasculitis)のカテゴリーに入り,皮膚アレルギー性血管炎,持久性隆起性紅斑,皮膚型結節性多発動脈炎などが含まれる.上記の全身性の小型血管炎の皮膚症状としても出現することがあり,そのときはSOVに含めない.過敏性血管炎(hypersensitivity vasculitis)とよばれることもある.
病理
皮膚所見として触知可能な紫斑を特徴とし,その組織学的特徴は「白血球破砕性血管炎」であり,真皮の細動脈〜毛細血管〜後毛細血管細静脈にかけて血管外に遊走した白血球の核破壊像やフィブリノイド壊死を認める(図10-8-12).
臨床症状
発熱,関節痛,筋痛などの全身症状とともに,触知可能な紫斑や,丘疹,小水疱,潰瘍,結節などの皮膚症状を呈する.多くは薬物投与(抗菌薬,アロプリノール,サイアザイド,プロピルチオウラシル,生物学的製薬など)の既往を有する.全身性血管炎や糸球体腎炎による症状はみられないが,ときに全身性の小型血管炎の症状を呈してくることもあり,その場合は診断名が変更となる(上述).
検査成績
非特異的炎症反応を認める.全身性の小型血管炎に関連した検査異常を呈してくることもある.
診断・鑑別診断
診断は皮膚症状と皮膚の生検所見による.しかし,この組織像は非特異的であり,薬剤誘発性のものや,上記の小型血管炎のいずれでも共通である.そのため,臨床的には「原因の如何を問わず」組織学的に皮膚白血球破砕性血管炎と診断して,その上で病因を検索する必要がある.
経過・予後
予後は良好で一峰性の症状発現を見た後,数週ないし2,3カ月で自然軽快する.約10%の症例で数カ月〜数年の間隔で再燃する.全身性の小型血管炎の症状を起こしてくるものでは,その疾患の経過に従う.
治療
原因薬物が疑われるときは休薬する.抗ヒスタミン薬や非ステロイド系抗炎症薬などによる対症療法が主体である.皮膚症状が重篤なときは経口ステロイド薬も考慮する.全身性の小型血管炎へと進展するものでは,その疾患の治療に従う.[尾崎承一]
■文献
Falk RJ, et al: Granulomatosis with polyangiitis (Wegener's): An alternative name for Wegener's granulomatosis. Ann Rheum Dis, 70: 704, 2011.
Jennette JC, Falk RJ, et al: 2012 revised international Chapel Hill consensus conference nomenclature of vasculitides. Arthritis Rheum, 65: 1-11, 2013.
Mukhtyar CL, et al: EULAR recommendations for the management of primary small and medium vessel vasculitis. Ann Rheum Dis, 68: 310-317, 2009.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報