如何(読み)イカガ

デジタル大辞泉 「如何」の意味・読み・例文・類語

いか‐が【如何】

《「いかにか」の音変化
[形動][文][ナリ]成り行きや結果を危ぶむさまを表す。どのよう。「その考え方は如何ものか」
[副]
状態・意見などについてたずねるさま。どう。どのように。「御機嫌如何」「この件は如何いたしましょうか」
事の成り行きについて疑問をさしはさむ気持ちを表す。どう。どんなもの。「その案は如何かと思う」
相手を誘ったり、相手に勧めたりする気持ちを表す。どうですか。「お一つ如何」「あなたも御一緒如何
疑問を表す。どのように…か。
「―言ひやるべきと、近う居給ふかぎりのたまひあはせて」〈・三五〉
反語の意を表す。どうして…か。
「かくばかり逢ふ日の稀になる人を―つらしと思はざるべき」〈古今・物名〉
どう言ったらよいかわからないほどの意で、強調する気持ちを表す。どんなにまあ。さぞかし。
「かかる物に捨てられぬといはれむは、―いみじかるべき」〈落窪・二〉
[類語]どういうどんなどのようどういかにいかよういかないかなるいかん

いか‐ん【如何/奈何】

《「いかに」の音変化》
[名]事の次第。なりゆき。ようす。「理由の―によっては」「事の成否は君の協力―による」
[副]文末に用いて、状態などについての疑問を表す。どんなであろうか。「君の心境や―」
[類語]なりゆき次第事情わけ子細所以ゆえんどういうどんなどのようどういかがいかにいかよういかないかなる

どう【如何】

[副]
事物の状態・方法などを、不明または不特定のものとしてとらえる気持ちを表す。どのように。どのよう。「彼の意見を―思うか」「―すればいいのかわからない」
相手の意向を問うことより、ある動作を勧める気持ちを表す。「まあ、一杯―だい」「―、もう帰りませんか」
[補説]「どう」は方法や状態に関する疑問の気持ちを表し、「どんなに」は、性質や状態の程度を表す。したがって、「君の家へはどう行ったらいいのか」の「どう」を「どんなに」とは置き換えにくいが、「どう考えてもわからない」の「どう」は「どんなに」に置き換えられる。また、「どんなに寒くてもこたえない」の「どんなに」を「どう」に置き換えることはできない。なお、「どのように」は、「どう」と「どんなに」双方の意味を兼ね備えているから「君の家にはどのように行ったらいいのか」とも「どのように寒くてもこたえない」とも言える。
[類語]どういうどんなどのよういかがいかにいかよういかないかなるいかん

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「如何」の意味・読み・例文・類語

いか‐が【如何・奈何】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 「いかに」に助詞「か」の付いた「いかにか」が変化したもの ) →いかがは
    1. ( 心の中で疑い危ぶむ意を表わす ) どう。どのように。どうして。どんなに。
      1. [初出の実例]「うち物語らひて、帰り来て、いかが思ひけん、〈略〉雨そほふるに遣りける」(出典:伊勢物語(10C前)二)
    2. ( 反語の意を表わす ) どのようにまあ…か。どうしてまあ…か。(そんなはずはない、できないの意となる)
      1. [初出の実例]「かくばかりあふひのまれになる人をいかがつらしと思はざるべき〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)物名・四三三)
    3. ( 軽く尋ねて相手の意向を確かめたり、呼びかけてすすめたりする意を表わす ) どう。どうか。どうです。
      1. [初出の実例]「ひたたれ乞ひにつかはしたるに、裏なんなき、それは着じとや、いかがといひたれば」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)雑一・一〇九六・詞書)
    4. ( 物事の程度や状態が、はっきり限定できないほどはなはだしい意を表わす強調辞 ) (はっきり言えないが)どんなにまあ。どれほど。
      1. [初出の実例]「さらんのちに物したらんは、いかが人笑へならん」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. どのような。どうして。
      1. [初出の実例]「元もとよりいやしき遊女の事なれば、いかがのこころざしの出来(いでき)なんも知らず」(出典談義本・労四狂(1747)下)
    2. ( あとに「なり」「で」などの指定辞を伴って用いることが多い ) どうかと思われるさま。考えものであること。→いかがしい
      1. [初出の実例]「さのみ心弱くてもいかがとて」(出典:十六夜日記(1279‐82頃))

如何の語誌

( 1 )「いかにか」から「いかが」という変化は、「に」の撥音化とそれに並行する「か」の濁音化、すなわち「イカンガ」を媒介にして成立したと考えられる。
( 2 )一〇世紀初頭の仮名資料に「いかか」が現われ始めるが、この時期はまだn撥音を無表記としており、例えば「土左‐承平五年二月四日」の「しし(こ)」が「死にし(子)」であり、「シンジ(コ)」と発音されていたと推測されるように、同じく「そもそもいかかよむたる」〔土左‐承平五年一月七日〕の「いかか」も「イカンガ」と発音されていたかもしれない。
( 3 )意味はもと上代の「いかにか」「いかに」とほぼ同じであるが、平安期以降ほぼ状態や様子に限定されながら、鎌倉期には「その様子が望ましくない、困ったものだ」という意味を派生する(中世後半から近世になると「いかがし」「いかがはし」を派生する)。これに対して、「いかに」は状態・様子以外に理由・原因を問う用法が発達する。


いか‐ん【如何】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「いかに」の変化した語 )
  2. ( 多く文末に用いる ) 事がらの内容、状態、原因、理由などを疑い問う意を表わす。どのよう。どうであるか。どうか。
    1. [初出の実例]「已に統師をして、諮請せしむ。師の意何如(イカン)」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)一)
    2. 「家君の病は如何ん」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉九)
  3. 事がらの内容、状態、原因、理由を不定のままにいう意を表わす。どうこう。
    1. [初出の実例]「何(イカン)といふことなくして天宝に大に兵を徴(め)す」(出典:白氏文集天永四年点(1113)三)
    2. 「問題は、〈略〉その悩みと喜びの分ち方いかんにある」(出典:芸術・歴史・人間(1946)〈本多秋五〉三)
  4. いかん(如何)せん
    1. [初出の実例]「予は誰の為に満村恭平を殺せしか。〈略〉こは予も亦答ふる能はざるを如何(イカン)」(出典:開化殺人(1918)〈芥川龍之介〉)

いか【如何】

  1. 〘 名詞 〙いかさま(如何様)[ 四 ]」の略。
    1. [初出の実例]「博奕(ばくち)打てば如何(イカ)にかけられて」(出典:談義本・当世穴穿(1769‐71)三)

いか【如何】

  1. 〘 造語要素 〙 「いかに」「いかなり」「いかなる」「いかで」「いかが」「いかばかり」「いかさま」などの語群を作る。物事の様子や状態を疑い、推測する意味を表わす。どのよう。どう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「如何」の読み・字形・画数・意味

【如何】いかん

いかに。いかんぞ。いかんせん。〔論語、衛霊公〕之れを如何せん、之れを如何せんと曰はざるは、吾(われ)之れを如何ともする末(な)きのみ。

字通「如」の項目を見る

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