相殺戦略(読み)そうさいせんりゃく(その他表記)countervailing strategy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「相殺戦略」の意味・わかりやすい解説

相殺戦略
そうさいせんりゃく
countervailing strategy

カーター政権下,1980年度アメリカ国防報告で明らかにされた核抑止戦略。 80年8月の大統領令第 59号において公式採用を公表,同時に核攻撃目標の優先度の比重を経済目標から軍事目標へ移行し,特に指揮管制機能と政治中枢機能の破壊を重視するとともに,核戦争の長期化に備えて非脆弱な戦略予備戦力を維持するとしている。相殺戦略は,相互確証破壊能力に依拠してはいるが,ソ連からいかなる限定核攻撃がなされた場合でも,各段階でこれに報復可能な (相殺可能な) 戦力,すなわちソ連の各種軍事目標,工業目標,政治中枢目標を選択的に報復攻撃できる核能力を維持し,全面核戦争を抑止しようとするものである。

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世界大百科事典(旧版)内の相殺戦略の言及

【核戦略】より

…同政権のブラウン国防長官は,ソ連の核戦力がミサイル数や破壊威力総計などで優位にあることを指摘して,〈ソ連の享受している戦力特質のどのような面も,アメリカが持つ他の有利な面で相殺することが必要だ〉と述べた。カーター大統領は1980年7月,核攻撃目標の変更を指令した大統領指令第59号(PD59)に署名し,この〈相殺戦略countervailing strategy〉の実施を確認した。 ニクソンの十分性戦略に始まり,シュレジンジャーの柔軟反応核戦略,ブラウンの相殺戦略まで一貫しているアメリカ核戦略の思想は,ソ連の核戦力の増強に対抗して,小規模・限定的な核攻撃から大規模な全面核戦争まで,予想されるいかなる態様の核攻撃に対しても対応できる選択肢を持ち,これによって核抑止を強化することを目ざしているといえよう。…

※「相殺戦略」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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