日本大百科全書(ニッポニカ) 「相談心理学」の意味・わかりやすい解説
相談心理学
そうだんしんりがく
counseling psychology
心理学の臨床的分野のうちでも、とくにカウンセリングに関する理論的・実践的な研究を主内容とする学問的体系をさす。「カウンセリング心理学」とほぼ同義である。
20世紀初頭、アメリカで盛んになった職業指導運動、教育測定運動、精神衛生運動などにその端緒があるとみられており、1950年代から心理学の一分野として認められるようになった。カウンセリングなど心理臨床分野での問題や課題(目的、方法、過程、効果など)の探究、その実践的解明と応用的展開などを研究の対象としている。
日本では、相談心理学に相当する内容の研究や実践は、1980年代以降急速に進展してきているが、それらを「相談心理学」という名称で統括することはあまりなされていない。それは、この名称の学会が存在しないこと、心理学関係のカリキュラムにこの名称の科目がほとんどみられないことなどに起因している、といえよう。
しかし、相談心理学が個人(人間)の心理的な成長や治療への援助・支援に寄与するという点での認識は広く得られてきている。また専門的な心理臨床実践家としてのカウンセラーとは別に、「カウンセリング・サイコロジスト」counseling psychologistという名称が使われているが、これはその分野での研究者や指導的人物をさす場合が多い。
[増田 實]
『中山巌著『学校教育相談心理学』(2001・北大路書房)』