改訂新版 世界大百科事典 「短期保険長期保険」の意味・わかりやすい解説
短期保険・長期保険 (たんきほけんちょうきほけん)
私保険と社会保険を保険期間の長短によって区分したもの。私保険の場合には,契約期間の長短によって,比較的短期の契約期間による損害保険や生命保険(とくに団体生命保険)を短期保険,契約期間が長期にわたる生命保険や年金保険を長期保険とすることができる。社会保険の場合には強制的に継続して加入するので,給付事由の継続期間,したがって給付期間の長短を第一の基準にとるべきであろう。長期給付である老齢給付,遺族給付,障害給付を行う年金保険が長期保険,短期給付である疾病給付,出産給付,失業給付,医療を実施する医療保険と失業保険は短期保険である。業務災害給付を行う労災保険は長期給付と短期給付を併せ実施するので,両方の性格を持ち合わせる。短期保険は,給付事由が短期間に消滅するか給付が短期間で打ち切られるので,財政計画も単年度ごとか比較的短期間について立てればよい。それに対して長期保険である年金保険では,もっとも主要な給付である老齢年金が長期間の加入を受給要件としていることもあって,給付と負担の安定性と連続性を保つためには,相当長期にわたる期間についての財政計画や財政見通しを持たなければならない。とくに人口の年齢構造の長期的変化が予測される場合にはそうであり,単年度ごとに財政収支の均衡を保つ賦課方式を採用する場合でも不可欠な長期保険としての要件である。
→年金財政方式
執筆者:保坂 哲哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報