日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝子質変性」の意味・わかりやすい解説
硝子質変性
しょうししつへんせい
硝子変性ともいう。病理学的に、変性とは、退行性病変に含まれ、生体の機能の減退とか機能の異常とかに基づいて、細胞・組織内に生理的にはまったく存在しない物質、あるいは生理的に存在する物質でも、正常とは異なった場所、ないし異常な量として認められる状態を意味している。変性はこれらの物質の種類によって、タンパク質変性、脂肪変性、グリコーゲン変性、カルシウム(石灰)変性、結晶体変性、色素変性に分類され、硝子質変性はタンパク質変性の一種である。タンパク質変性は種々な状態で、多くの疾患あるいは病態におけるさまざまな細胞・組織に認められ、それぞれの特徴によって、顆粒(かりゅう)変性、空胞変性、粘液変性、膠様(こうよう)変性、硝子質変性、類デンプン(アミロイド)変性、類線維素(フィブリノイド)変性、角質変性などと表現されている。硝子質はヒアリンhyalineという一種のタンパク体で、均質かつ無構造であるため、組織標本の染色としてもっともしばしば用いられる酸性色素であるエオジンで淡赤色に染まり、その状態が不透明な「曇りガラス」に似ているのでこの名称がつけられている。一般に結合織のなかに出現するもので、血管壁、瘢痕(はんこん)組織、腫瘍(しゅよう)の間質などによく認められる。また、脾臓(ひぞう)、リンパ節などの網状組織に沿ってみられることもある。なお、類デンプン変性の場合に認められるものも硝子質に類似したタンパク質であるが、特殊な染色による反応で硝子質とは区別される。
[渡辺 裕]