翻訳|microfinance
貧困層・低所得層を主たる対象として、きわめて小口の融資や貯蓄、その他の金融サービスを、適切な費用で提供する小規模金融のこと。
開発途上国においては、生計をたてるための資金を必要とする低所得層が数多く存在するにもかかわらず、担保となる資産をもたないため、また利子以外の負担の高さから、既存の銀行を利用できなかった。そこで、貧困対策の一環として、こうした貧困世帯の資金需要に対応する小口の融資が1970年代から登場した。これはマイクロクレジットとよばれてきたが、近年貯蓄サービスの重視とその他の金融サービスも想定されるようになったことから今日では「マイクロファイナンス」という呼称が使われている。
マイクロファイナンスは過去30年の間に貧困緩和の重要な手段として広く普及し、国連には約3000の実施機関と8000万人の利用者が報告されている(2004年9月現在)が、報告に上らない組織も無数に存在する。
実施団体は非政府組織(NGO)信用組合、政府機関など多様であるが、マイクロクレジット導入の初期段階の努力はおもにNGOによって行われてきたし、現在でも法的規制を受けていない組織は多い。かつては、先進国の政府あるいは民間の援助で始められることが多かったが、今日ではその採算性に注目して、民間銀行が参入してくるケースもみられる。
農村や貧困層対象の銀行による金融を阻んできた主たる要因は、顧客情報の取得が困難であること(情報の非対称性)と単位当り取引費用の高さであるが、ユヌスが創設したグラミン銀行Grameen Bank(バングラデシュ)やアクシオン・インターナショナルACCION International(中南米等で活動しているNGO)などの著名なマイクロファイナンス機関は、さまざまなくふうで無担保融資を可能にしてきた。多くの場合、女性グループの組織化とそれによる連帯保証制を採用し、また、集金業務を農村内部や市場で行うことで利用者の負担の軽減を図り、短い周期の分割・小口回収で返済率を高めている。なお、グラミン銀行とその創設者ユヌスは、貧困撲滅に貢献したことが評価され、2006年のノーベル平和賞を受賞している。
マイクロファイナンスは、(1)零細事業の運転資金や企業資金を提供することによって貧困層の市場への参入を促進し、その所得向上を助ける。また(2)費用負担の小さい貯蓄サービスをすることで、不測の事態に対応するための貯えや資産の形成を可能にする。(3)女性の組織化により、家庭や地域経済において能力の発現が抑制されてきた女性の活力を引き出す。これらを通じて貧困緩和に貢献することが期待されている。
1990年代までは、資金や運営費用については外部からの援助を前提として、より多くの貧困層に到達することが重視されてきたが、今日では一般の金融機関と同様に、経営健全性、外部資金依存からの脱却と組織の持続性がより重要な課題となっている。また、グループ化や連帯保証制を伴わない融資方法や、保険、送金、リースなど多様で顧客のニーズに対応した金融商品の開発が追求されている。
[岡本眞理子]
『渡辺竜也著『「南」からの国際協力――バングラデシュグラミン銀行の挑戦』(1997・岩波書店)』▽『ムハマド・ユヌス、アラン・ジョリ著、猪熊弘子訳『ムハマド・ユヌス自伝――貧困なき世界を目指す銀行家』(1998・早川書房)』▽『岡本眞理子・粟野晴子・吉田秀美編著『マイクロファイナンス読本――途上国の貧困緩和と小規模金融』(1999・明石書店)』▽『ナオコ・フェルダー著、森友環莉訳『入門マイクロファイナンス――世界を貧困から救う、新しいビジネスモデル』(2005・ダイヤモンド社)』▽『坪井ひろみ著『グラミン銀行を知っていますか』(2006・東洋経済新報社)』
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