福山秘府(読み)ふくやまひふ

日本歴史地名大系 「福山秘府」の解説

福山秘府
ふくやまひふ

二七巻八冊 松前広長(監物)

成立 安永九年序

写本 道立文書館・北海道大学附属図書館・市立函館図書館

解説 松前藩主の一族で松前藩随一の学者であり、「松前志」の著者としても知られる松前広長が、安永年間に当時現存していた公私の記録および諸書をもとに編纂した分類別の松前藩史料の集大成。最初の七巻は「年暦部」で松前藩の年代記が出典を明示して詳記されており、以下は部門別の史料集となっている。目録には六〇巻の内容が記されているが、現存するのは二七巻分のみで、巻二二の「幾利仕丹部」(キリシタン弾圧)や巻五二―六〇の「寛文夷乱記」(シャクシャイン蜂起)などを欠くのは残念である。興味ある史料には蝦夷地における境界論争などを記した巻二六「古今訴状部」や朝鮮人李先達一行の礼文島漂着に関する記録(巻三〇―三一)などもある。

活字本新撰北海道史」第五巻史料一

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「福山秘府」の意味・わかりやすい解説

福山秘府
ふくやまひふ

松前(まつまえ)藩関係史料の大集成。全60巻。1776年(安永5)松前藩主道広(みちひろ)の命を受けて家老松前広長(ひろなが)が編集に従事し、80年12月に脱稿した。広長は通称監物(けんもつ)、字(あざな)は子玄で、豹関、老圃と号し、『松前志』『松前年歴捷径』『毛人井蛙談』『松前武備志』などを著した碩学(せきがく)である。

 本書は、第一巻から第七巻にわたる年歴部をはじめ、公用、藩主系譜、諸法令、古今訴状、家臣座列など藩政にかかわる諸部のほか、地理里程、蝦夷言語、禽獣(きんじゅう)、魚貝、樹木、薬品、寛文夷乱など、松前・蝦夷地にかかわる万般の部門を網羅している。残存しているのは29巻ほどにすぎないが、近年になって年歴部の全巻がそろうなど、新しく発見される可能性を秘めている。また、1781年(天明1)に成った広長の地誌『松前志』10巻は、本書の欠落部門のかなりの部分を補うものと考えられている。

[小林真人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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