福建語(読み)ふっけんご

改訂新版 世界大百科事典 「福建語」の意味・わかりやすい解説

福建語 (ふっけんご)

福建省中心とする中国語方言群で,別称閩(びん)語。分布の内部的差異は大きく,(1)厦門アモイ)に代表される閩南部(福建南東部から広東省韓江デルタ一帯および台湾が中心で,さらに北は浙江から南は海南島に至る沿海地方に広く散在する),(2)福州等の福建北東部,(3)建甌等の福建北西部に大別される。使用人口は推定3900万。また厦門方言は東南アジアの華僑の方言として最も有力である。特徴としては,古全濁声母が無声化において無条件で無気有気の両者に分岐している。この他福建語独自の字音変化や語彙が多く見られる。例えば,〈茶〉の発音は中国語方言一般に破擦音頭子音を示すが(北京語はチャーchá),厦門方言ではテー[te24]のごとく破裂音である。なお英語のティーteaはこの厦門方言からの借用語と言われる。また福建語全体の特徴ではないが,厦門や福州方言の〈変調〉(声調の形態音韻変化)や閩南部に発達した〈文白〉(漢字の口語音と文語音),異読はよく知られる。福建語方言間の差異の大きさから,その形成については,漢族言語層および先住民族言語層の両者において複合的要因が予想される。このような福建語の独自性は,少なくとも漢字口語音の他方言からの分岐が比較的早期であったことによるとみられる。その他,史上王朝の中心から離れていた福建の地理条件も無関係ではあるまい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android