空谷の跫音(読み)クウコクノキョウオン

デジタル大辞泉 「空谷の跫音」の意味・読み・例文・類語

空谷くうこく跫音きょうおん

《「荘子」徐無鬼の「空谷に逃るる者は、人の足音の跫然たるを聞きて喜ぶ」から》だれもいないはずの山奥で聞こえる足音。孤独なときに受ける珍しくてうれしい訪問や便りのたとえ。

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精選版 日本国語大辞典 「空谷の跫音」の意味・読み・例文・類語

くうこく【空谷】 の=跫音(きょうおん)[=足音(そくおん)

  1. 人のいない寂しい谷に聞こえる足音。孤独を感じている時に同情者を得た喜びなどのたとえ。
    1. [初出の実例]「今日各に料らずも対面は、有繋(さすが)に昔を偲れて空谷跫音(クウコクキャウオン)の思ひあり」(出典読本南総里見八犬伝(1814‐42)九)

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故事成語を知る辞典 「空谷の跫音」の解説

空谷の跫音

さびしい思いをしている時に届く、うれしい知らせのたとえ。

[使用例] 当時これ等の名篇は創作探偵小説界に於ける空谷の跫音として、何人も一読三嘆したものだ[甲賀三郎*キビキビした青年紳士|1927]

[由来] 「荘子じょ」に出て来るエピソードから。紀元前四世紀、中国の戦国時代のこと。という国の君主武侯は、長い間、笑顔一つ見せたことがありませんでした。しかし、徐無鬼という隠者が面会して、よい犬や馬の見分け方を話したところ、大喜びして笑顔になりました。いったいどんな話をしたのかと聞かれた徐無鬼は、「『くう(だれもいない洞窟)』に住んでいる人間は、『人の足音のきょうぜんたるを聞きて喜ぶ(だれかの足音が響くのが聞こえると喜ぶ)』もの。武侯には長い間、本当のことを語ってくれる人がいなかったのですよ」と答えたということです。

〔異形〕空谷の足音。

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