米ソ核戦争防止協定(読み)べいそかくせんそうぼうしきょうてい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「米ソ核戦争防止協定」の意味・わかりやすい解説

米ソ核戦争防止協定
べいそかくせんそうぼうしきょうてい

冷戦時代に米ソ間の事故や誤算による核戦争の危険を減少することを目的として取り交わされた「米ソ偶発核戦争防止協定」(1971.9.30調印・発効)に次ぐ米ソ間の取決め。1973年6月22日調印、同日発効。両国間の核戦争の防止だけでなく、米ソとその他の諸国との関係を規定している点に特徴がある。すなわち、米ソが、互いに相手国、その同盟国、あるいはその他の諸国に対して武力威嚇・使用を差し控えること(第2条)、とくに米ソ以外の諸国の関係が、米ソ間あるいは米ソとその他の諸国との核戦争の危険をはらむとき、米ソが緊急協議に入り、その回避努力をすること(第4条)などがうたわれている。いずれの協定も米ソ相互核抑止体制の安定的機能に対する攪乱(かくらん)要因除去をねらいとするが、とくに1973年協定は米ソが他国の安全にかかわる問題について審判者の立場にたつことを認め合ったという意味で、米ソ本位の国際政治構造をいっそう制度化したという性格が強い。なお、類似の目的をもつ取決めとして、米ソ直通通信回線(ホットライン)設置了解覚書(1963)、同改善協定(1971)、米ソ公海事故防止協定(1972)、また未発効ながら、国境内のミサイル発射の場合でも発射されるミサイル数が複数のときには互いに通報するという規定を含む「米ソ戦略兵器制限条約」(SALT‐Ⅱ、1979調印)がある。なお同協定は1991年のソ連解体後ロシアに引き継がれている。

[納家政嗣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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