日本大百科全書(ニッポニカ) 「米谷植物群」の意味・わかりやすい解説
米谷植物群
まいやしょくぶつぐん
Maiya flora
宮城県登米(とめ)市東和(とうわ)町米谷の下部ペルム系錦織(にしきおり)層から産出する古生代の植物群。いまから約4億5000万年前に陸上進出に成功した植物は、古生代の石炭紀からペルム紀(二畳紀)にかけて多様化を続けるとともに分布を拡大し、世界中に大森林をつくった。この時代の石炭は世界的に採炭され、それに伴って植物化石も多産するが、日本ではまれである。当時の日本は海が多く陸地が少なかったことと、陸成層が堆積(たいせき)しても後の地殻運動によって変質を受けたため、石炭紀からペルム紀にかけての植物化石は断片的にしか産出しないからである。しかし、米谷付近に分布する黒色頁岩(けつがん)からなる海成層には、大陸側から漂移してきたとみられるペルム紀前期の比較的良質な植物の印象化石が含まれ、貴重である。植物相は豊富とはいえないが、おもなものは次のとおりである。
もっとも多いのはソテツ類の葉に似た形態をもつタエニオプテリスTaeniopterisと、針葉樹類の祖先ともいわれるコルダイテスCordaitesで、タエニオプテリスは14種に及んでいる。コルダイテスには、北半球型の大形のコルダイテス・パルマエフォルミスC. palmaeformisと、南半球に一般的といわれる小形のコルダイテス・ヤポニクスC. japonicusがある。ついで楔葉(けつよう)類(トクサ類)のスフェノフィルムSphenophyllum、トリジギアTrizygia、パラトリジギアParatrizygiaの3属が産する。また裸子植物ギガントプテリス類のカタイシオプテリス・ワイテイCathaysiopteris whiteiが発見されている。カタイシオプテリスは中国を中心として分布した古生代後期のカタイシア植物群の特徴種であるため、米谷植物群もカタイシア植物群に所属することがわかる。福島県いわき市高倉山のペルム紀後期の柏平(かしわだいら)層からは、ギガントプテリス類のバイコエンプレクトプテリス・ハレイBicoemplectopteris hallei、ギガントプテリス・ニコティアナエフォリアGigantopteris nicotianaefoliaを産するので、ペルム紀の日本がユーラシア大陸の東岸に位置していたことが推定できる。
[浅間一男・西田治文]