日本大百科全書(ニッポニカ) 「粕漬け」の意味・わかりやすい解説
粕漬け
かすづけ
野菜、魚、肉類を酒粕や、みりん粕に漬けた漬物で、特有の香りとうま味がある。野菜としてはシロウリ、キュウリ、ナス、ダイコン、カブ、未熟なスイカ、魚貝類はタイ、サケ、マス、貝柱、肉類は牛肉、鶏肉などである。野菜類は塩で一度下漬けするか、日に干して余分の水分を除いて粕床(どこ)に漬ける。魚貝類は、塩をふって肉をしめてから漬ける。粕は、清酒のもろみを絞った残りかすの酒粕と、みりんのもろみを絞った残りかすのみりん粕があるが、一般には酒粕が多く用いられる。粕床は、板粕に焼酎(しょうちゅう)と水をあわせたものをふりかけて、手でよくこねて容器にすきまなく詰め、目張りをして4~5か月保存し、発酵させたあと、塩、砂糖を加えてよく混ぜ合わせ材料を漬け込む。粕漬けの代表的なものに奈良(なら)漬け、守口(もりぐち)漬けなどがある。これらは漬けておく期間が長いが、粕漬けには即席漬けもある。即席のものでは、軟らかい酒粕に砂糖、みりん、塩などをよく練りこんで床をつくり、この中に下漬けした野菜のほか肉や魚を漬け込むが、この場合は酸敗しやすいので、短期間で食用とするものが多い。