日本大百科全書(ニッポニカ) 「奈良漬け」の意味・わかりやすい解説
奈良漬け
ならづけ
粕(かす)漬けの代表的なものの一つ。シロウリを主原料に、キュウリ、未熟の小さいスイカ、ダイコンなどを調味・熟成した酒粕に漬けたもの。本来は、シロウリを漬けたものに限って奈良漬けとよんでいたが、今日では菜瓜(なうり)類も用いられている。奈良は古代よりよい清酒の産地で、その酒粕を利用した粕漬けも早くから発達していた。奈良で漬けられる漬物という意味でこの名がついた。原料のシロウリは縦二つ割りにして種をとり、下漬け、中漬け、本漬けの順に漬ける。下漬けは塩だけの場合と、酒粕を用いる場合がある。酒粕使用の場合は、古い酒粕に塩を混合して使う。中漬けは本漬けに用いたあとの古酒粕を利用する。中漬けは20~30日ごとに酒粕をかえて回数を多くするほど風味のよいものができる。普通、酒粕の入れ替えは1~4回行う。本漬けに近づくにつれてウリの塩分は少なくなり、酒粕の糖分やアルコール分が移行して風味がよくなる。本漬けは新しい熟成酒粕を用い、焼酎(しょうちゅう)、みりん、砂糖などをあわせた中に、中漬けの終わったウリを漬け込む。漬け込み後1か月くらいから食べられるが、べっこう色になるまで漬けたものが味にこくがある。
[河野友美]