日本大百科全書(ニッポニカ) 「粘液腫」の意味・わかりやすい解説
粘液腫
ねんえきしゅ
ゼリーのような柔軟性をもつ腫瘍(しゅよう)性病変。発生頻度の比較的低い良性腫瘍で、成人に多く発生するものとされ、好発部位は限定的である。大腿(だいたい)や肩などの骨格筋肉にみられる筋肉内粘液腫、心内膜から発生して心房内にポリープ状腫瘤(しゅりゅう)を形成する心臓粘液腫、ほかに膝蓋(しつがい)骨に腫(は)れと痛みを伴う膝蓋粘液腫、頭頸(とうけい)部と上肢の皮膚に多くみられる神経鞘(しょう)粘液腫のほか、顎(がく)骨内に発生する歯原性粘液腫、副鼻腔(びくう)に発生する粘液腫などもある。心臓粘液腫は、原発性の心臓腫瘍のなかでもっとも多くを占めるもので、左心房にみられることが多い(左房粘液腫)。また、きわめてまれにみられるものに、腹膜偽(性)粘液腫とよばれる腹腔内に粘液がたまる悪性の腫瘍がある。これは虫垂や卵巣・卵管などで産生された粘液が増殖して、虫垂や卵巣の壁を破って穿孔(せんこう)し、腹腔内でさらに増殖して腹部膨満から腸閉塞(へいそく)などに陥り、死に至ることも多い病態である。
[編集部]