卵管(読み)ランカン

デジタル大辞泉 「卵管」の意味・読み・例文・類語

らん‐かん〔‐クワン〕【卵管】

雌性生殖器の一部。卵巣から排出された卵を子宮あるいは体外に向かって運ぶ管。人間ではここで受精が行われ、卵割を終えて子宮壁に着床ちゃくしょうする。輸卵管喇叭らっぱ管。
[類語]卵巣子宮ちつ女性生殖器

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精選版 日本国語大辞典 「卵管」の意味・読み・例文・類語

らん‐かん‥クヮン【卵管】

  1. 〘 名詞 〙 動物の雌の生殖器官の一部。卵巣から卵を受け取り、排出するための管で、卵生の動物では生殖口に、胎生の動物では子宮に開く。哺乳類の管をいうことが多い。受精はこの管の中で行なわれる。輸卵管。らっぱ管。〔医語類聚(1872)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「卵管」の意味・わかりやすい解説

卵管
らんかん

動物の卵巣から排卵された卵を受け取り生殖孔まで運ぶ管のことで、輸卵管ともいう。両生類以上の脊椎(せきつい)動物の卵管は発生学的にはミュラー管に由来し、魚類や無脊椎動物の卵管は一般に卵巣被膜が伸長したものである。胎生である哺乳(ほにゅう)類の卵管は胎児維持のためにその大部分が子宮と腟(ちつ)に分化するので、この両部分を除いた残りの部分を狭義に卵管(またはラッパ管)とよび、そこが受精の場である。卵生の動物では卵管壁より栄養、卵殻などを分泌して卵に与える。昆虫などの卵巣は何本かの細長い管の集合からなり、この管を卵管(または卵巣管)とよび、卵巣の末端部から先を輸卵管とよんでいる。

[守 隆夫]

ヒトにおける卵管

ヒトの卵管は左右1対になっており、子宮底の左右外側角から始まり、骨盤側壁に向かって延びている(長さは7~15センチメートル)。卵管はその全長にわたって腹膜に包まれ、他の内臓の間膜と同じように卵管間膜を形成し、そのまま子宮広間膜に続く。つまり、卵管間膜は子宮広間膜の上縁にあたる。卵管はこの卵管間膜によって支持されている。卵管の内側端は子宮内腔(くう)に開く卵管子宮口であり、外側端は腹膜腔に開く卵管腹腔口である。卵管は構造上、全長を4区分する。最内側は子宮壁内にある子宮部で、これに続いて卵管峡部がある。これは長さ3~4センチメートルで、卵管中でもっとも狭い部分である。卵管は、ここからしだいに膨大となり、卵管膨大部となる。この部分の長さは7~8センチメートルで、卵管全長のほぼ3分の2を占め、卵巣を前上方からアーチ型に囲んでいる。続いて卵管膨大部は漏斗(ろうと)状の卵管漏斗に移行し、花弁状になって腹膜腔に開く。この花弁状の部分を卵管采(さい)という。卵管采の花弁の1本は長く延びて卵巣の上端表面に付着するが、これはとくに卵巣采とよばれる。卵巣の上端内側面はこの卵管采によって房(ふさ)をかぶせたように覆われるため、卵巣の内側面から排出された卵は、うまく卵管内に吸引されることとなる。

 受精は卵管の膨大部で行われる。受精卵は卵管内を子宮に向かう間に発育し、子宮壁に着床する。卵管の内面粘膜で覆われるが、とくに卵管漏斗や卵管采の粘膜上皮には多数の線毛があり、この線毛運動は卵の輸送に役だっている。また、卵管の粘膜には縦走するヒダが多く(これを卵管ヒダという)、卵管膨大部でとくに発達している。粘膜の外側には固くて厚い内輪層と外縦層の平滑筋が発達し、この筋の収縮による卵管の蠕動(ぜんどう)運動が卵の輸送を助けている。卵が卵管に入らず、腹膜腔で受精してしまう場合を腹腔妊娠(にんしん)という。また、まれには、なんらかの原因で受精卵が卵管内で発育してしまうことがある。これを卵管妊娠といい、卵管流産とか卵管破裂などの危険を生じる場合がある。このほか、細菌感染によっておこる卵管炎などで卵管が閉鎖されると、不妊症の原因となることもある。

 なお、卵管はその形状から古くはラッパ管とよばれたほか、発見者であるイタリアの解剖学者ファロピーオG. Fallopio(1523―1562)にちなみ、ファロピーオ管あるいはファロビウス管ともよぶ。

[嶋井和世]


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改訂新版 世界大百科事典 「卵管」の意味・わかりやすい解説

卵管 (らんかん)
oviduct
tuba uterina[ラテン]

卵巣から出た卵を子宮まで運ぶ管。輸卵管またはらっぱ管ともいう。発生的には子宮と同じくミュラー管に由来する。一端は子宮の上外側隅で子宮内腔に開き(卵管子宮口),他端は卵巣の近くで腹膜腔に開く(卵管腹腔口)。卵巣から出た卵は卵管腹腔口から卵管内に入る。卵管は子宮口側は細いが,腹腔口側はしだいに太くなり,端のところがらっぱ状に広がり,しかも深い切れ込みが入っている。ここを卵管采(さい)といい,腹腔口近くの太くなった部分を卵管膨大部と呼び,受精はこの膨大部で起こるという。卵管の壁は内側から外側に向かって,粘膜,筋層,漿膜(腹膜)からなる。粘膜上皮は単層円柱繊毛上皮で,分泌細胞と繊毛細胞があり,筋層の分節状収縮とともに卵の運搬に関与している。分泌細胞の分泌物はpH7~8で,各種の必須アミノ酸とかなりの量の乳酸を含むが,グルコースやフルクトースは少ない。発見者はイタリアの解剖学者G.ファロピオで,彼の名にちなんで〈ファロピウスの管Fallopian tube〉と呼ぶこともある。
執筆者:

卵管の病気には,発育不全や奇形のほか,卵管炎,卵管妊娠,腫瘤や腫瘍などがある。また,なんらかの原因によって卵の卵管通過が障害されると,不妊症や卵管妊娠を起こすことがある。卵管の通過性や周囲の癒着の状態などを診断するために,子宮卵管造影や卵管通気法などの検査が行われる。

(1)子宮卵管造影 腟から子宮を通して卵管に造影剤(油性ヨード剤)を注入し,テレビカメラ透視下で連続撮影する方法で,月経直後に行われる。これによって,卵管の走行,通過性(狭窄や閉塞の有無)などを知ることができる。さらに造影剤注入直後の撮影像と24時間後の終末撮影像での造影剤拡散状態の比較から,卵管采や卵管周囲の癒着の有無やその状態を知ることができる。

(2)卵管通気法 腟から子宮を通して卵管に二酸化炭素を注入し,注入圧をキモグラフに記録して,卵管の通気性を調べる方法。通常,卵胞期に行われる。二酸化炭素ガスが卵管を通過するときの泡沫音を聴診器で聴くことによって,ある程度,通過性を知ることができるが,卵管の閉鎖はグラフの型によって識別する。このほか痙攣(けいれん),癒着,狭窄などもグラフから識別できるというが,判定はむずかしいことが多い。ガスが腹腔内に流出すると,横隔膜が刺激され,肩の痛みがでるが,この痛みは数日で自然に消失する。
執筆者:


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百科事典マイペディア 「卵管」の意味・わかりやすい解説

卵管【らんかん】

輸卵管,らっぱ管とも。脊椎動物において卵巣から出た卵を子宮に送る管。発生的には子宮は卵管から分化したもの。成人で長さ約10cmで,子宮の両側にある子宮広間膜という腹膜のひだの上縁を走る。子宮に続くところは狭く,外側方は広く,ついに漏斗状(ろうとじょう)となり花弁のように開く(卵管釆(さい))。排卵によって卵巣を破って腹腔に出た卵は,ここから漏斗の繊毛上皮の働きで卵管内に取り入れられ,卵管筋層の収縮(蠕動(ぜんどう))に助けられて子宮に送られる。
→関連項目子宮人工流産卵管炎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「卵管」の意味・わかりやすい解説

卵管
らんかん
oviducts

女性生殖器の一つ。卵子を卵巣から子宮に運ぶ長さ約 10cmの左右1対の管。輸卵管ともいい,また先端がらっぱのように広がっているので,ラッパ管とも呼んだ。発見者の G.ファロピウスの名を取ってファロピウス管ともいう。卵巣から排出された卵子を取入れ,膨大部で精子と受精させ,子宮腔に送って着床させる働きをする。

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栄養・生化学辞典 「卵管」の解説

卵管

 輸卵管ともいう.子宮の側壁から伸びる管で,排卵された卵を卵巣から子宮の方へ送る管.

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世界大百科事典(旧版)内の卵管の言及

【性器】より

…すなわち男性では睾丸(精巣)で作られた精子が副睾丸(精巣上体)から精管を経て尿道に運ばれるが,付属腺として精囊や前立腺などがあり,交接器として陰茎がある。女性では卵巣とそこで作られた卵子を運ぶ卵管と,受精卵を育てる子宮,交接器としての腟などがおもな性器である。 このように,また,いうまでもなく,性器は男女で著しい性差を示すが,一般に性腺自身の特徴を一次性徴といい,それ以外の性別を示す特徴を二次性徴という。…

※「卵管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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