日本大百科全書(ニッポニカ) 「田辺茂一」の意味・わかりやすい解説
田辺茂一
たなべもいち
(1905―1981)
小説家、紀伊國(きのくに)屋書店創業者。本名茂一(しげいち)。東京生まれ。慶応義塾高等部卒業。1927年(昭和2)紀伊國屋書店を創立、その経営にあたりながら舟橋聖一、阿部知二(ともじ)らと文芸雑誌『行動』の発行や、『能動精神パンフレット』(1935)の編集をする。かたわら作家論、小説を発表。ことに艶笑(えんしょう)随筆に優れ、粋人として知られた。評論集に『轗軻(かんか)』(1941)、短編集に『世話した女』(1953)、『芯(しん)のない日々』(1970)など、自伝長編『すたこらさっさ』正続(1973)、随筆集に『わが町・新宿』(1976)ほか多数ある。1979年フランス政府から文芸勲章騎士章(シュバリエ・デ・ザール・エ・レットル)を贈られた。
[遠矢龍之介]
『『わが町・新宿』(旺文社文庫)』