朝日日本歴史人物事典 「紀大人」の解説
紀大人
生年:生年不詳
7世紀後半の官人。紀麻呂の父。天智9(670)年閏9月,藤原鎌足の葬送に当たり,必要な品々を整えている。翌年1月,御史大夫に任じられ,11月天智天皇の病床で時の左右大臣,御史大夫ら4人と共に,大友皇子への忠誠を誓った。以後の消息は不明。没年月日は『紀氏系図』によったが,『続日本紀』の紀麻呂の薨伝に「近江朝御史大夫贈正三位大人子也」とあり,正三位を贈られたのは死後である。江戸後期の国学者伴信友は,紀大人が壬申の乱(672)のときに終始大友皇子方だったとすれば,この追贈は理解に苦しむところであり,ひそかに大海人皇子(天武天皇)に通じていた可能性があったことを指摘している(伴信友『長等の山風』付録)。
(寺崎保広)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報