日本大百科全書(ニッポニカ) 「経営規模」の意味・わかりやすい解説
経営規模
けいえいきぼ
scale of business
経営体の大きさをいう。その指標としては、資本額、資産額、従業員数、生産能力、売上高などがあるが、理論上、決定的なものはない。経営規模の問題点は、規模の大小が経営目的の達成度、とくに経済的効果に重大な影響を及ぼすことにある。このような経営規模の効果のうちもっとも基本的なものは、「規模の経済」である。それは、規模の増大とともに節約効果が発生し、典型的現象としては単位当り費用(原価)が逓減(ていげん)していく一般的現象をいう。このような現象は、機械制生産の高度化による固定費(生産量の増減に関係なく発生する費用)の増大に関係がある。一般に各種の生産能力をもつ規模についてそれぞれの最小単位費用を求めると、規模が増大するにつれ、単位当りの固定費負担が低下するため、その額は低下していく。これが規模の経済である。しかし、このような効果は無限に現れるものではなく、ある限界を超えると、過大規模による管理費用の増大などにより、単位費はかえって上昇するようになる。このように、単位費の低下の効果が停止し、それが上昇に転じる規模を、最適経営規模optimum scale of businessもしくは適正経営規模といい、それ以上の規模を過大経営規模、それ以下のものを過小経営規模という。最適経営規模の大きさは、業種(製品の種類)、業態(受注生産か見込み生産か)、技術動向、管理能力などにより相違するが、経営者は極力この規模に近づけるよう努力する。そこに規模政策の必要がある。
規模を一定(例、能力x万トンの設備)にして、それを各種の程度(操業度)で稼動させると、操業度変化による単位費用の動向は、上開きのU字状に変化する。同様のことを各種規模について行い、各種規模の最小単位費用点を結ぶと、長大なU字曲線が現れる。この長大なU字曲線の最低点をもたらす規模が、理論上、最適経営規模になる。
[森本三男]