経済厚生(読み)けいざいこうせい(その他表記)economic welfare

改訂新版 世界大百科事典 「経済厚生」の意味・わかりやすい解説

経済厚生 (けいざいこうせい)
economic welfare

厚生〉とは人間の幸福もしくは福祉を指すのであるが,とくに経済厚生とは経済的観点からみた厚生を意味する。A.C.ピグーによれば,この経済厚生とは社会を構成する各個人の効用総和である。しかし,効用の総和を直接に取り扱うことはできないから,彼はそれに対応するものとして国民所得を考えた。そして,(1)国民所得が大きいほど,(2)貧者の受けとる国民所得の分が大きいほど,(3)国民所得の変動が少ないほど,経済厚生は大きいと結論する。ピグー議論にはいくつかの価値判断が含まれている。とくに問題となるのは,各個人の効用の総和を経済厚生とする操作背後にある,個人間の効用を比較できるという判断である。このようなピグーの厚生経済学を批判し,できるだけ受け入れられやすい価値判断だけに基づいて,経済厚生の最大化を考えるのが新厚生経済学である。すなわち,他の人の効用を減ずることなしには,だれの効用をも増加しえない状態を最適とする基準を採用するものであり,この結果所得分配の問題が切り離され,資源配分の問題だけが取り扱われることになった。
厚生経済学 →パレート最適
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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