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結晶のすべり けっしょうのすべりcrystal slip; glide

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

結晶のすべり
けっしょうのすべり
crystal slip; glide

金属特有の結晶塑性がすべりによることは,実験的に早くから知られていた。1つの結晶の原子配列が1つの原子面 (すべり面) を境に上下両半が互いに移動するのがすべりである。直接移動とすればそれに要する応力はどんな金属でも計算上 1000 kg/mm2 以上になる。ところが実際の多くの純金属のすべり応力はわずか数 kg/mm2 にすぎない。この謎を解いたのが 1934年,G.I.テーラーらが導入した転位論であった。すなわちすべり面の上下両半は直接移動するのでなく,結晶に1つの転位が導入され,転位が波のように移動すれば,それに要する応力はきわめてわずかでよいことが示されたのである。これがすべりの基本機構で,その集積により結晶は格子の形をこわさずにどんな形にも変形できる。実際には結晶の原子配列も転位の形ももっと複雑であるが,根本は同じである。金属に限って結晶塑性が可能である理由は,結晶内原子がすべて同質の陽イオンで,自由電子の形成する陰電荷による金属結合で結ばれているので,隣接原子が交代してもその関係が変らないからである。イオン結晶では隣接原子が交代すると同符イオンが隣接することになり,自由電子の存在がないからその間に大きな反発力を生じて結晶は破壊する (すべり変形ができない) 。なお金属の場合,結晶内には転位は初めから非常に多数存在すると考えられているが,もし転位の存在がないとすれば 1000 kg/mm2 以上の応力を加えないと変形は起りえない。現実にはひげ結晶がそんな理想結晶に近いものと考えられ,実際にそれは驚くべき強さをもっている。

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