絵入ロンドン新聞(読み)えいりろんどんしんぶん(その他表記)The Illustrated London News

日本大百科全書(ニッポニカ) 「絵入ロンドン新聞」の意味・わかりやすい解説

絵入ロンドン新聞
えいりろんどんしんぶん
The Illustrated London News

1842年、イギリス挿絵を中心としたビジュアルな週刊紙として創刊された新聞。創刊者のハーバート・イングラムHerbert Ingram(1811―1860)は、当時『オブザーバー』『ウィークリー・クロニクル』など挿絵を多用した週刊紙が読者の評判をよんでいたのにヒントを得たといわれる。先行した絵入り新聞が多く失敗に終わったのに反し、同紙は創刊号から大成功した。全16ページのなかに32葉の絵を刷り込み、価格は6ペンス、部数は2万6000部だったが、創刊1年後には6万部、1856年には20万部弱、1863年には30万部にまで伸びた。文章とイラストの組合せでわかりやすくニュースを伝え、読者に受け入れられた。当初は、イギリスの社会生活をおもな題材にしていたが、徐々にその範囲を広げて一般ニュースも取り込み、大きなできごとがあると海外にまでイラストレーターを派遣した。グラフィック技術の進歩も同紙の発展に幸いし、19世紀末のハーフトーン処理技術、20世紀に入ってからのフォトグラビア技術、カラー印刷技術は読者の拡大をもたらした。しかしテレビ普及とともに昔日勢いを失い、1971年には月刊に、1992年に隔月刊、1999年に年2回刊と徐々に発行頻度が減り、2003年にはついに160年にわたる歴史の幕を閉じた。ただ、発行社のイラストレイテッド・ロンドン・ニューズ・グループは現在も活動しており、同紙のイラストや写真を集めたライブラリーを運営するとともに、雑誌も刊行している。

[橋本 直]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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