日本大百科全書(ニッポニカ) 「絶対の探究」の意味・わかりやすい解説
絶対の探究
ぜったいのたんきゅう
La Recherche de l'Absolu
フランスの作家バルザックの長編小説。1834年刊。フランドルの富裕な旧家の主バルタザール・クラースが、万物に共通な物質、すなわち「絶対」を発見するために、家庭をも顧みず、地所も森林も処分し、借金までして化学実験に没頭する。
そのショックで妻は病死し、一家は貧窮のどん底に落ちる。クラースが家出している7年間に、娘マルグリットたちの努力で一家はもとの財産を取り戻すが、娘夫婦の1年半の留守の間に、クラースはまたもや実験にとりかかって破産する。帰宅した娘夫婦の前で、彼は一言「ユリイカ(われ発見せり)!」と叫び、息を引き取る。リアリズムのなかで、作者の絶対志向をつきつめた傑作である。
[平岡篤頼]
『水野亮訳『「絶対」の探求』(岩波文庫)』