絹一揆(読み)きぬいっき

改訂新版 世界大百科事典 「絹一揆」の意味・わかりやすい解説

絹一揆 (きぬいっき)

江戸中期,1781年(天明1)に西上州一帯に展開した絹改料反対の農民闘争。上州,武州では農間余業として絹織物生糸生産が行われ,各地の絹市と呼ばれる在市で取引がなされた。絹市には都市問屋の者が出張して買い取り,京都に運んで加工し,全国市場に関東絹として送り出した。18世紀後半,老中田沼意次の主宰する幕閣は,株仲間を公認し冥加金を徴収する政策をとっていたが,これに呼応した形で上州・武州47ヵ所の絹市に対し,10ヵ所の反物および貫目改所を設けて,改料を徴収することを願い出た者があった。願人3人は名主,宿問屋,本陣兼名主を務める者たちであったが,そのほかにも数十人の同調者がいた。幕府はこの願いをいれ,改所を設置して,反物1疋につき銀2分5厘,糸100目につき銀1分,真綿1貫目につき銀5分の改料を買取人から徴収する旨を令した。これを不満とする都市問屋は絹買付けを行うことを見合わせたため,生産者農民が絹市に出ても市が立たず,農民たちの不満・怒りが爆発して打ちこわしを伴う一揆が起こった。願人やその同調者たち,さらに名主・宿問屋・郷代官・領主賄方商人などの村落支配層,高利貸的な上層農民の家々を打ちこわしたうえ,一揆勢は高崎城に迫った。西上州一帯で数万人に及ぶ農民が参加し,老中松平輝高の城下高崎まで脅かすといった不穏な情勢に,幕府は改所停止を触れざるをえなかった。この一揆は,18世紀後半に展開した広域闘争一例とみなすことができる。
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百科事典マイペディア 「絹一揆」の意味・わかりやすい解説

絹一揆【きぬいっき】

江戸時代中期,上野(こうずけ)国に起きた一揆。1781年上野・武蔵(むさし)の両国で開かれていた絹市に,反物(たんもの)および貫目(かんめ)改所を設置して改料を徴収することを出願した名主(なぬし)・宿問屋(といや)らがおり,幕府がこれを認可したため,作間稼(さくまかせぎ)に生糸(きいと)や絹織物を産していた百姓らが反発打毀(うちこわし)を伴う一揆となった。一揆勢は高崎城に迫る勢いで,幕府も改所設置を停止することとした。

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