化学辞典 第2版 「置換基定数」の解説
置換基定数
チカンキテイスウ
substituent constant
ハメット則に表れる比例定数ρσのうち,置換基の種類と位置によって決まるσ値をいう.ρは反応定数とよばれ,反応の種類と温度や溶媒の誘電率などの条件で決まる定数である.L.P. Hammettは,安息香酸の酸解離定数 K H を基準として置換基定数σを式(1)によって定義した.
σ = log(K X/K H) = pK H - pK X (1)
Xは安息香酸のパラあるいはメタ位のHに対する置換基を表し,K X は置換基の入った安息香酸の酸解離定数である.この置換基定数を用いると,ベンゼン誘導体の化学平衡や反応に対して,次式がよく成立する.
log(K X/K H) = log(k X/k H) = ρσ (2)
k X,k H は置換基がある場合とない場合のベンゼン誘導体の反応速度定数である.Hammett以後,この関係はベンゼン誘導体の反応に限らず,多数の芳香族化合物についても同様な関係が見いだされている.またさらに,式(2)に小さな補正をほどこして,複雑な芳香族化合物(たとえば,トリフェニルメタノール)のpKに対する置換基効果や,脂肪族化合物(たとえば,カルボン酸エステル)の加水分解に対する置換基効果などにも応用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報